この事例の依頼主
30代 女性
Tさんは、婚姻中に、性格の不一致や夫のモラハラに悩んでいました。夫のモラハラには、飲酒時の暴言も含まれており、将来的にそれがエスカレートしないかと不安になるものでもありました。しかし、二人の間に子どもはいませんでしたが、婚姻後に住宅ローンを組んでいたことから、離婚することも簡単ではありませんでした。そのため、Tさんは、数年間にわたって、離婚すべきかと悩みながら、夫のモラハラに堪えていました。そんな中、Tさんは、夫との関係が冷え切っていた中で、一度限りではありますが、知人男性と関係を持ってしまいました。これを知った夫は激怒し、Tさんに対して酷い暴言に加え、脅迫めいた言葉まで吐いてきました。それに止まらず、夫は離婚することも拒否して、離婚するのであれば多額の慰謝料を支払うよう要求してきました。Tさんからすると、確かに不貞行為の責任はあるかもしれないけれど、そもそも夫婦関係が悪化したのは、夫のモラハラが原因という思いがありました。それに、夫婦関係が破綻しているのに、離婚ができないのかも疑問でした。Tさんは、夫と離婚したい一心で、弁護士に相談に来られました。
Tさんのお悩みは、①夫と離婚できるのか、②慰謝料はどのくらいになるのか、③住宅ローンはどうなるのか、④離婚協議中や離婚後も夫のモラハラが続かないかという大きく4つがありました。これについて、弁護士は、①不貞行為があると離婚できないことがあること、②不貞行為が一度限りであることなどから、慰謝料は100万円から200万円程が相当であること、③住宅ローンは夫に負担してもらうよう求めるべきこと、④離婚協議中や離婚後の付きまといなどには刑事罰が科せられる可能性があることを伝えました。このように、Tさんが抱える一番の問題は、そもそも離婚できるかどうかという点にありました。不貞行為などの有責行為のある配偶者を「有責配偶者」といいますが、有責配偶者は、法律上、10年以上にわたって離婚できないことがあります。Tさんは、まさにこのような結果になりかねない状況にあったのでした。しかし、Tさんの場合には、夫が高額な慰謝料を得る目的で離婚を拒否しているに過ぎないですから、そのような要求に屈することが公平といえるかも甚だ疑問でした。また、そもそもTさんは、夫のモラハラに長い間、堪えてきたのであり、Tさんだけに責任があるとはとても言えない状況でした。そこで、弁護士は、法律上は離婚できるか難しいところがあるものの、できる限り早期に離婚が成立するよう手を尽くして対応する旨を伝えました。ご相談の後、正式に弁護士が委任を受け、早速、夫との協議に着手しました。夫は、弁護士からの連絡があった途端に、今までのような強気の慰謝料の要求などはしなくなりました。それは、過度な慰謝料要求が、その態様等によっては、脅迫と捉え得ることなどが影響しています。しかし、弁護士との協議によっても、夫は、頑なに離婚には応じようとしませんでした。そこで、弁護士は、速やかに調停手続きを申し立てました。そして、調停手続きでは、夫のモラハラがいかに酷かったかや婚姻を継続することが不可能であることを訴えかけました。結果として、第3回目の調停期日では、夫も婚姻継続を諦めるに至り、法律上の相場により、離婚に応じる意向を示すに至りました。結果として、相場通りの慰謝料のみで、住宅ローンも全額を夫が負担することで離婚が成立するに至りました。Tさんからすると、何年間も離婚できないままになる可能性があったところから、わずか数か月で離婚が成立するに至ったのであり、大変安堵する結果となりました。また、離婚後に元夫に住所を知られない方法も取り、付きまといなどの心配もないよう対処しました。
Tさんは、なかなか離婚を切り出せずに、結果として、自分が不利な立場に追い込まれてしまっていました。意外にも、Tさんのように、一人で悩んでしまい、不利な立場に追い込まれてしまってから相談に来られる方は多いです。このような場合、弁護士が必死に対応することで、Tさんのようにどうにか良い結果に繋がることもありますが、中には手遅れになることもあります。まずはお一人でお悩みになる前に、できる限りお早めに一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。