この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
相談内容別れた元配偶者から財産の分与を求める調停が申し立てられた。既に相当額の金員を支払っており,精算は終わっている筈だが,これ以上の支払いを行うことは到底納得できない。また,相手から分与を求められている財産の中には,結婚する前に自分がためたお金で購入したものや,相続で取得したものなど,本当に相手に分与しなければならないものなのか疑問なものが多く含まれている。何とか対応して欲しい。
解決への流れ
受任後、直ぐに委任状を作成して裁判所に送付。それと併せて別居時点における双方名義の財産を調査・確定した後,その内①依頼者の親からの相続によって取得した金員及び不動産(そこから得られた収入分も含む)②婚姻前に貯蓄された金員及びそれを使用して購入した資産(株式など)③依頼者の営む事業追行のため,個人的な資産とは別途に保管されていた金員を特定し,当該部分については財産分与の対象にはならないことを,各証拠を示しながら裁判所と相手方に主張。併せて,離婚時に相手方に支払った金額により,既に離婚時給付の精算は終了済みであることを主張。裁判所の心証を大きく当方に傾けさせることに成功し,最終的に相手方の請求額の3分の1以下の金額を支払うという内容の調停を成立させることができた。
離婚に伴う財産分与は基本的に婚姻関係破綻時(多くは別居時)における夫婦共有財産を対象に,それを双方に分配(原則的に50パーセント取得分になります)することになります。ここで重要なのはあくまで分与対象は夫婦共有財産、すなわち、夫婦が婚姻中協力して得られた財産ということであり、婚姻前から保有していた財産や、他方の相続により取得した財産は除かれることにことになります(これを特有財産と言います)。たただ、特有財産を認めてもらうためにはそれを主張するものがきちんと立証を行う必要があり、当該事案において何が特有財産となるか判断と、まさにこの立証の部分が弁護士の腕の見せ所になります。今回のケースは、上でのべたような特有財産が考えられたため、それを裏付けるような証拠(すなわち、不動産登記や過去の預金通帳、各種取引履歴、相手方作成のメモ等)を揃えて提出し、比較的優位に調停を進めることができました。この分野は経験があるか無いかで結論ががらりと変わる分野であり、弁護士に依頼されるにしても、良く吟味されてから判断された方が良いと思います。