犯罪・刑事事件の解決事例
#遺言 . #遺産分割 . #財産目録・調査

遺産を特定の相続人に全て相続させる旨の内容の直筆の遺言の無効を主張し,法定相続分どおりの遺産分割を実現した事案

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我妻 耕平 弁護士が解決
所属事務所虎ノ門法律経済事務所川崎支店
所在地神奈川県 川崎市幸区

この事例の依頼主

60代 女性

相談前の状況

(相談内容)亡くなった実父が,「遺産は全て弟に相続させます」旨の遺言(直筆)を残していた。しかし,常日頃遺産は公平に分けてくれといっていた父がそのような遺言を作成するとは考え難い。また,作成日とされている時期は既にかなり認知症が進行して施設に入所しており,まともな判断はおろか,日常的なコミュニケーションすら困難な状態にあったのであり,一人でこのような内容の遺言を作成できる筈が無い。施設に頻繁に出入りしていた弟の関与があったものと考えられるが,法律で決められたとおりの平等な割合で遺産を分けることは出来ないのか。このような遺言があるため,遺産についても弟が全て管理しており,不動産及び従前付き合いのあった金融機関や証券会社以外は何も分からない状態にある。

解決への流れ

相談後,弟に対して遺言の無効を前提とする遺産分割協議の請求を行うこと及びそれが奏功しなかった場合を考えて,遺留分減殺請求を併せて行うことについて,委任を受ける。受任後,直ぐには受任通知を作成せずに,①父親の遺産(預金の取引履歴,不動産登記,固定資産台帳,証券会社の残高証明名等)の調査②認知症の進行の程度が分かる資料(要介護認定の記録,主治医のカルテや投薬の内容及び実施した知能検査等の資料)の調査を並行して行った。その結果,死亡当時の父親の遺産を概ね特定することができ,かつ,遺言作成当時には遺言の内容を理解して有効にこれを作成する能力が到底認められ無かったことが判明。それまでの調査結果と主張を纏めた通知書を作成し,弟宛に送付したところ,遺言の存在については無視した上で遺産分割協議に応じるとの申出があった。その後,不動産の評価や,遺産中の使途不明金についての協議が行われたものの,概ね想定していた遺産額の半額の分配を受けることができた。

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我妻 耕平 弁護士からのコメント

相続トラブルで良くあるのは,特定の相続人に対して有利な遺言が残されており,その効力が争われるというパターンです。この場合,遺言作成時に作成者に正常な判断能力が存在している場合は問題ないのですが,遺言は往々にして認知症発症後に危機感を覚えた特定の相続人に主導されて作成されることが多く,この場合は遺言作成時において作成者に遺言の内容を理解し,有効に意思表明をする能力(遺言能力)が存在していたかが,他の相続人から争われる事になります。本件では,遺言上遺産の分与を受けられない相続人からの依頼でしたが,綿密に調査した結果,明らかに遺言作成時に判断能力が存在しないことを示す資料が出てきたため,調停や訴訟に移行する事案が多い中で有利に交渉を進めることができ,最終的には交渉で解決をすることができました。