この事例の依頼主
70代 女性
相談者は70代の女性。相談の2か月前にご主人を亡くし,相続人はご主人の兄弟2人と自分の計3人とのこと。子供はいない。(相談事項)①体が弱っており自分で動くのが大変であるから,亡くなった夫の相続手続の代行(相続人調査及び財産調査,相続人間での遺産分割協議書の作成,預金解約,株式売却,不動産の名義移転等)を行って欲しい。他の相続人は自宅不動産を売却して換価することを要望しているが,自分はまだそこに住みたいので,ちゃんと協議を纏めて名義を自分のものにして欲しい。②将来的に自身の相続も見据えて準備をしておきたい。遺産は折り合いの悪い自分の兄弟よりも仲良くしてくれた友達に譲りたいが,遺言を作っておけばできるのか。また自分が倒れた時に,きちんと施設に入れてくれてきちんと財産の管理をしてくれる人を見つけておきたい。
実際に行った事項1 ご主人の相続手続との関係(1)実際の相続人が兄弟2人以外に存在するかを確かめるため,ご主人の両親の戸籍(産まれてから死亡するまでの一連戸籍)を遡って取得。(2)預貯金や証券類については通帳の記載や残高証明書を取得することにより確認,不動産については役所で固定資産台帳を調査するなど,財産の確定を併せて行う。(3)他の相続人には,自宅不動産について依頼者がまだ居住を継続する意思があるこ旨を内容証明郵便にて通知。依頼者に単独で名義を取得させる代わりに代償金を支払う内容での遺産分割協議を纏める。(4)作成した遺産分割協議書に従い,各預金の解約,株式の名義変更,自宅不動産の相続登記の申請を行い,事件終了。2 依頼者の手続について(1)遺言を作成しておかなければ自身の兄弟や姪に遺産が相続されてしまうため,ご主人の相続手続完了後,全財産を指定の友人に遺贈する旨と私を遺言執行者に選任することを内容とする公正証書遺言を公証役場にて作成。(2)また,今後の依頼者の体調悪化に備えて,財産管理契約と任意後見契約を締結。登記等必要な手続を行う。
ご主人の相続手続の代行及び遺産分割協議書の作成から,依頼者の遺言作成や任意後見契約の締結等の生前対策まで相続に関する手続を一環して行った事件です。自宅不動産については,他の相続人から売却の意向があったためにその説得に難航しましたが,適切な評価額に基づく代償金の支払を提案することによって,最終的には快く依頼者単独での移転登記手続に協力をしていただくことができました。当事務所は税理士,司法書士も所属している総合事務所であり,シニアサポートを専門としている「シニア総合サポートセンター」という法人も併設しており,これらの協力も得て迅速かつ適切な手続を行うことができました。