この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
父親の相続を巡る母親ときょうだい間の相続紛争事案です。ご依頼者は被相続人の子です。本件では、被相続人の預金の大半が、生前に相手方により引出しや借り入れによって失われており、また、対立相続人(母親)が居住中の不動産の他、非上場株式や共有中の不動産も存在していました。初回法律相談時、ご依頼者のL.Tさんは、代理を務めていた他の弁護士を解任し、新たな担当弁護士を探していました。1人目の弁護士、2人目の弁護士ともに、遺産分割調停に不慣れな様子もあり、調停のテーマや進行の段取り、具体的な遺産の配分全般に混乱が生じてしまい、調停の進行が大きく停滞している状況でした。
解決への流れ
調停に関与した当初、当事者双方の遺産分割の方向性、調停で解決したい事項にも混乱が見られました。そこで、調停を全面的に仕切り直し、(1)不動産の評価額の再調整、(2)特別受益・寄与分の裁判官関与のもとでの認定、(3)相続分の確定といった段取りで、調停の全体進行をテーマごとに整理をし、見直しを行うこととしました。(1)(2)(3)をひとつずつ丁寧に進めたことで、各相続人の取得遺産額の算定が可能になりました。調停手続き内で、各相続人の取得遺産の調整を弁護士間でやり取りを続け、結果として、未分割中の不動産の使用者からの使用料を含めて、遺産分割が成立しました。
当職へのご依頼時、ご依頼者のL.Tさんは、相続に関する多数のテーマを、全て調停内で解決しようとしており、調停に多数のテーマが載ることで議論が紛糾し、調停がスムーズに進まない状態となっていました。そこで、調停内で解決可能なテーマと、調停内で解決ができず、別途民事訴訟をしなければならないテーマの取捨選択をし、調停のテーマを限定することから始めました。本件では遺産の大半が不動産と非上場の株式であり、金融資産が少なかったため、遺産の配分調整が著しく難航しました。調停の終盤においても、感情面から相続人同士の意向対立も発生し、調停を不調として審判手続きも視野に入れて活動をしていましたが、最終的に、相続人同士の取得遺産の調整が進められ、調停成立に至りました。調停手続きの活動期間は約1年8か月です。活動開始当初、ご依頼者のL.Tさんは既に2人の弁護士が辞任してしまった経緯もあり、「果たして弁護士に任せて自分たちの遺産分割問題の決着がつくのだろうか」と、非常に不安な状況でした。そのため、調停内での紆余曲折を経て、無事に調停が成立した際は、とても喜ばれておりました。調停委員からは「谷弁護士でないと、この調停は成立しなかった。」との言葉もあり、また、ご依頼者のL.Tさんからは、「3年以上にわたる調停が無事に終わり、ようやく一息つけます。」といったお言葉をいただけました。調停でテーマにできなかった相続の未解決問題についても、継続的なご支援のお話となりました。