犯罪・刑事事件の解決事例
#人身事故 . #慰謝料・損害賠償 . #後遺障害等級認定

【頚椎捻挫・むち打ち】<賠償金900万円以上><後遺障害等級12級13号を獲得>むち打ち裁判

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木村 治枝 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人小杉法律事務所福岡オフィス
所在地福岡県 福岡市早良区

この事例の依頼主

40代 女性

相談前の状況

Nさんは母と共に生活をする40代の女性です。以前は仕事をしていましたが、お母様が病気となってしまったため、仕事を辞め、お母様の介護をしていました。ある日Nさんは、お母様が検査入院されたため、車を運転して、着替えなどを届けに病院へ向かいました。赤信号で停止して待っていたところ、前方不注視の車に追突され、むち打ちとなってしまいます。Nさんは、保険会社の担当者の話し方にストレスが溜まり、また、弁護士費用特約に加入していたことから、弁護士に依頼して交渉を任せようと思うに至りました。法律相談では、Nさんに対して、むち打ちの場合の、通院方法の注意点や、今後の流れなどについて説明をしました。

解決への流れ

第1 示談交渉の決裂後遺障害等級14級9号の認定を元に示談交渉を開始しましたが、保険会社より①Nさんは主婦ではないから休業損害や逸失利益は認めない②慰謝料は裁判基準の80%③元々ヘルニアがあったのだから素因減額30%を主張するなどと反論され、示談金約40万円が提示されました。あまりに不合理な主張であったで、裁判することに。合わせて、腕の痺れについても主張したいので、後遺障害等級12級13号の主張をすることにしました。第2 民事裁判1 後遺障害等級(1)医学的な裏付け被告からの指摘の中で超えなければいけないハードルとして、Nさんは片腕ではなく両腕に痺れが出ているというのがありました。確かに、神経根症の場合は、右上肢か左上肢のいずれかに痺れの症状が出ますので、両腕に痺れが出るのはおかしいということになります。しかし、Nさんの場合、頚椎の5番目と6番目の間の椎間板が左に出ていて、頚椎の6番目と7番目の間の椎間板が右に出ていましたので、この点のハードルはクリアすることができました。また、超えなければいけないもう一つのハードルとして、Nさんには腱反射の異常がないという点がありました。この点は、医学文献と病院の医師により、腱反射などの神経学的所見は個人差があるため、必ず低下や消失の所見が出るものではないことの立証を行い、重要なのは画像所見であると主張しました。(2)保険会社顧問医作成の意見書を叩くア 意見書で引用するデータは恣意的な切り取りがなされている保険会社提出の意見書には、そもそも原告には椎間板の突出はないし、仮にあるとしても、平均的に、C5/6(5番目と6番目の頚椎の間の椎間板のこと)では約75%、C6/7(6番目と7番目の頚椎の間の椎間板のこと)では約85%の椎間板突出があるものなので、原告に特異なものではないとの指摘が記されていました。しかし、上記データが記されている元文献を読むと、ここで記されているのは、平均1.3㎜のわずかな突出であって、一般的には「椎間板突出」と呼ばれるようなレベルの話ではなく、「椎間板変性」と呼ばれている話を、勝手に「突出」と置き換えて意見書が記されていることが判明した為、裁判で指摘を行いました。イ 保険会社提出のデータを元に考察しても原告の椎間板突出の程度は大きい日本人女性の第5頚椎における頚椎脊柱管前後径は15.8㎜とされていますので、保険会社提出の1.3㎜の突出をあてはめると、脊柱間の幅の1/11.5程度の突出が画像上確認できることになりますが、Nさんの画像から椎間板突出の割合を見ると約1/4となっていて、保険会社提出のデータと大きく異なることを指摘しました。ウ 原告の訴える症状と支配領域とが一致する意見書では医学文献を根拠として、Nさんが訴える神経症状と画像所見とが整合しないとの指摘がなされていました。しかし、保険会社の意見書が根拠とする医学文献を読むと、引用されている箇所というのは「放散痛」についてであり、その前提が誤っていることが判明します。同じ本の痺れの記載を読むと、Nさんが訴えている痺れの範囲と同書記載の皮膚感覚帯は概ね一致していました。(3)裁判所の判決以上の立証が奏功し、後遺障害等級12級13号に該当するとの判決が出ました。2 休業損害・逸失利益Nさんは主婦ではないため、家事従事者性は認められないと反論されていましたが、Nさんのお母さんの病状や、Nさんの家事・介護状況を尋問などで立証することで、Nさんの家事従事者性を認めさせることができました。

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木村 治枝 弁護士からのコメント

【解決事例のポイント】① 医学的意見書により神経根症を立証し、むち打ちとしては珍しい後遺障害等級12級13号獲得② 保険会社の示談提示40万円⇒裁判で900万円以上に③ 主婦ではないが、親の介護をしていたことを理由に休業損害・逸失利益認定④ 画期的な判決であるとして判例誌掲載(自保ジャーナル2060号54頁)【コメント】1 示談提示40万円が900万円以上の判決に保険会社からの示談提示は40万円ほどでしたが、裁判により遅延損害金を含め900万円以上の賠償額まで上げることができました。自賠責保険金75万円を加算すると、Nさんは1000万円程度を獲得できたことになります。2 保険会社提出の意見書はウソが多いので注意保険会社の顧問医というのは、保険会社と同じビルに診療所を構えて、診療所名も保険会社の名前を引用するなどして、保険会社に忖度しなければならない立場にあります。被害者側としてやってはいけないのは、医者の意見書が出されたことを理由に、請求を諦めてしまうことです。この裁判では保険会社の顧問医から2通の意見書が提出されましたが、いずれも適切に反論することで裁判所から排斥されています。医学文献を元にもっともらしいことが書かれていますが、その医学文献の原典にあたると、「そんなことは書いてない」といったことが判明することがあります。本件もまさにそのようなケースでしたが、保険会社の顧問医の意見書は、本当にその記載が合っているのかどうかを一々確かめた方が良いことが多いです。保険会社から理不尽な主張をされている方については、被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。