この事例の依頼主
女性
夫は子が生まれたというのに家事育児に非協力的であるばかりか、妻が苦情を言うと逆に暴言やモラハラで返されるほどであったので、妻(依頼者)は子を連れ実家の両親の元へ帰っていた。その後、夫とは双方の親を交えて離婚に向け話合いをしてきたが、夫は離婚に応じるのかどうか態度をはっきりさせず、仮に離婚するにしても子の親権は譲らないとか養育費は払わないなどと言っている。話合いの場では夫もさることながら夫の親も感情的になってしまって、妻側の話を聞いてくれないので、これ以上話をしたくないと思っている。妻は、現在、育休中で十分な収入がないが、配偶者から生活費を全くもらっていない。児童手当も世帯主であるとして夫側に支給されている。
依頼者は、夫(夫の親を含む)とはこれ以上話をしたくないとのことであり、また、夫も夫の親も感情的になってしまっているということなので、当事者間の話合いによる解決は困難であると判断し、離婚調停を申し立てることにした。また、依頼者は、別居中であるにもかかわらず夫から生活費を全く支払ってもらっていない、とのことだったので、離婚調停に加え生活費の分担を求める調停(婚姻費用分担調停)を同時に申し立てた。児童手当については、市役所で、離婚調停中であることと子を妻側で監護養育していることを説明したところ、以後は妻に支給されることとなった。調停では、予想どおり夫は離婚を拒否し、仮に離婚するにしても子の親権は譲らないとの意向を示したが、これに対し、こちらとしても離婚の意思は固く、子の親権は絶対に譲れないとの意向を裁判所に強く伝えたところ功を奏し、夫の態度に変化がみられ、離婚に応じるとともに子の親権についても妻でよいとのことであった。養育費についても算定表のとおり支払ってもらうこととなり、別居中の生活費(婚姻費用)についても算定表のとおりの金額を調停申立の月まで遡って支払ってもらうこととなり、こちらの要求のとおりの解決となった。
本件は、妻が夫から暴言やモラハラを受け、別居するに至っており、妻に夫との婚姻関係を続けていく意思がないことが明らかなケースでしたので、離婚調停を申し立てることで夫と離婚できる可能性は高いように思われましたし、実際に調停も妻の離婚意思を尊重する方向で話が進みました。なお、妻は育休中で十分な収入がないことから自身が子の親権者になれるのかということを気にされていましたが、そのことは親権者を定める上で決定的な事情ではありませんので、そのように説明させていただき安心していただきました。また、妻は、相談に来られる前にはご自身で気付いておりませんでしたが、別居中は夫に婚姻費用の分担(子と妻自身の生活費の一部負担を求めること)ができますので、そのことも説明させていただき、婚姻費用も請求していくことにしました。児童手当については、世帯主(たいていの場合は夫)の口座に支給されていると思われますが、本件のように別居していて妻側が子を監護養育しているという実態があり、かつ離婚に向けて調停手続までしているということを市役所に示すことによって、妻の口座への支給に変更してもらえることが通常であると思われます。調停手続では、本件の夫は当初、離婚を拒否し、子の親権も譲らないとの意向を示しましたし、調停手続を取り仕切る調停委員さえも、夫がそのように言っているがどうしますか、という妻を不安にさせるような言い方をしてきました。このようなことは調停手続ではよくあることですが、このような場合には、そこで動じることなく、妻としても離婚の意思が固いことと子の親権は絶対に譲れないということを強く主張することが大事です。そのように妻が態度を明確にすることで、調停委員は逆に夫側を説得しなければならないと考えるようになります。本件では、こちらが強く主張することで夫の態度が変わるという結果をもたらし、離婚や親権の問題についてこちらの望んだとおりの返答を得ることができました。養育費や婚姻費用の金額については、算定表をベースに主張していくことになりますが、これについても調停ではぶれないことが大事です。本件でも算定表のとおり支払ってもらうことで夫側も納得をされました。とは言っても、調停で自分の主張を貫徹するのは、実は容易ではないことですので、熟練した弁護士を代理人に委任して調停を進めていくことがベストであることは間違いありません。本件の依頼者は、初めて相談に来られた際と、離婚調停が成立して解決した時とでは表情が全く異なり、明るく元気になって事務所を後にされたのがとても印象に残っています。