この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
はじめは、同じ研究室に勤務する上司が夫であり、その夫との離婚についての相談でいらっしゃいました。大学にとっては、依頼者は夫と離婚することになったため、同じ研究室に元夫婦がいれば上司である夫が働きにくくなるからということが雇止めの実質的理由だと思われましたが、形式的には予算都合の雇止めだと説明されていました。当然のことながら、依頼者はそれでは納得がいかないということで地位確認請求の労働審判を申し立てることにしました。
解決への流れ
依頼者と大学の労働契約は有期雇用でしたが、著名な判例で形式は有期雇用でも無期雇用と同等に扱ってもいい場合があるというものがあったことから(判例の要約は正確さよりもわかりやすさを重視しています)、本件もその場合にあたるのだということを具体的事情に即して詳しく主張しました。そのうえで、本件が整理解雇の適法性要件4つのいずれも充足せず違法無効なものだということを主張したところ裁判所はそれを認めました。労働審判の典型的な進行としては、第1回に主張の確認と当事者の審問、その結果に基づいた調停案の提示があり、第2回までにその調停案に合意できるか各自検討してくるという宿題がなされ、うまくいく場合には第2回期日で調停成立という流れですが、本件もそのような流れで進行して決着しました。
労働法は専門知識が必要とされる法分野であり、本件の主張の中心は過去の判例との類似性を中心に据えましたが、そのような主張は当然のことながらその判例の結論を知っているだけではできません。その判例は労働法の理論上どのような位置づけで、どういう事実がポイントとなっていてというような、当該判例を詳細に分析して得た深い知見がなければ、実のある法的主張はできないものです。今回はそのような作業が功を奏した事案でした。