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東京拘置所、就寝と昼寝以外は「横になったらダメ」 弁護士会が「人権侵害」改善求める
2021年10月18日 16時09分

東京弁護士会は10月18日、東京拘置所に対して、刑事裁判の判決が確定していない被収容者(未決被拘禁者)が規定の時間帯以外では身体を横たえること(横臥)を禁止しているのは、憲法に定める人権を侵害しているなどとして、現在の運用を改め、申告による横臥を認めるよう勧告した。勧告書は同日付。

東京拘置所の未決被拘禁者の男性が2020年9月、横臥に関するルールの改善を求めて人権救済申し立てをしていた。

東京弁護士会は10月18日、東京拘置所に対して、刑事裁判の判決が確定していない被収容者(未決被拘禁者)が規定の時間帯以外では身体を横たえること(横臥)を禁止しているのは、憲法に定める人権を侵害しているなどとして、現在の運用を改め、申告による横臥を認めるよう勧告した。勧告書は同日付。

東京拘置所の未決被拘禁者の男性が2020年9月、横臥に関するルールの改善を求めて人権救済申し立てをしていた。

●決められた時間帯以外は「横になってはいけない」

東京弁護士会によると、東京拘置所は、仮就寝から就寝時間帯(17時から翌7時(休日は翌7時半))および午睡時間帯(12時10分から14時45分)以外では横臥を禁止している。

勧告書では、東京拘置所が横臥を一般に認めない運用は、未決被拘禁者の人格的自律権(憲法13条)を侵害し、また奴隷的拘束を強いるもの(憲法18条)だとしている。

勧告の理由については、次の2点を挙げる。

(1)未決被拘禁者は無罪の推定を受けており、勾留の目的を超えてその自由を制約できない。未決被拘禁者といえども居室で自由な姿勢をとることは人格的自律権として認められる。

(2)閉鎖空間で一定の姿勢をとり続けた場合、血流が固まり、腰痛や肩痛などの原因になることが考えられ、自由な姿勢をとろうとするのも身体の苦痛を取り除くために必要。横臥を禁止した場合、身体に対する苦痛を強要されることにもなる。

●自由に横になることができる施設も存在する

問題視されているのは東京拘置所だけではない。

東京弁護士会人権擁護委員会の山﨑健弁護士によると、大分県弁護士会が2016年12月、大分刑務所に対して、受刑者の横臥を禁止していることについて、行動の自由を侵害していると勧告。また、三重県弁護士会も2017年7月、三重刑務所に対して、横臥の禁止は人権侵害だとして勧告しているという。

大分県弁護士会の当時の調査では、食事や点検以外のすべての時間帯で横臥を認めている収容施設も複数あったという。

東京拘置所が横臥を禁止する理由について、東京弁護士会が照会したところ、「被収容者が勝手に横臥していると即時に異常の有無を確認できないから」との回答があった。

「しかし、異常の有無を確認するためということならば、横臥の届け出をさせるという運用にしても、その目的は達成できるのではないでしょうか。行き過ぎた制約だと思います」(山﨑弁護士)

また、東京拘置所は、横臥を禁止する根拠となる法令について、起居動作の時間帯や施設内の規律維持を定める刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)38条および73条を挙げたという。しかし、これについても山﨑弁護士は異を唱える。

「これらの規定は被収容者が運動や入浴など一斉におこなわなければならないことを定めるものであって、居室で横になることなどを禁止することまでも認める規定だとは、私たちには読めませんでした」

弁護士会の勧告に強制力はないが、山﨑弁護士は「人権の最後の砦として、私たちの勧告というのは重く受け止めてもらっていると考えていますし、勧告があったことを広く知ってもらうことで、運用が変わっていくことを期待しています」と話した。

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