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<三重中3女子致死>19歳少年に遺族が1億円請求 「損害賠償命令制度」とは?
2015年03月22日 10時18分

三重県朝日町で2013年8月、中学3年生の女子生徒が窒息死させられた事件で、裁判員裁判の初公判が3月上旬、津地裁で開かれた。被告人の少年(19)は強制わいせつ致死と窃盗の罪に問われており、検察側は「被害の結果や遺族の処罰感情を考慮し、懲役刑が相当」と主張している。判決は、3月24日に言い渡される予定だ。

この公判の前に、女子生徒の遺族が「刑事裁判の判決以外にも、生涯をかけて罪を償う自覚をしてほしい」として、1億1000万円の損害賠償を少年に求める方針だと報じられた。刑事裁判の手続の中で被告人に賠償請求できる「損害賠償命令制度」に基づいて、民事的な責任も追及するのだという。

遺族が利用した「損害賠償命令制度」。この名前を初めて聞く人もいるかもしれない。いったい、どのような制度なのだろうか。また、川崎市の中1殺害事件で逮捕された少年たちに対しても、この制度を利用して賠償請求できるのか。刑事事件にくわしい中村勉弁護士に聞いた。

三重県朝日町で2013年8月、中学3年生の女子生徒が窒息死させられた事件で、裁判員裁判の初公判が3月上旬、津地裁で開かれた。被告人の少年(19)は強制わいせつ致死と窃盗の罪に問われており、検察側は「被害の結果や遺族の処罰感情を考慮し、懲役刑が相当」と主張している。判決は、3月24日に言い渡される予定だ。

この公判の前に、女子生徒の遺族が「刑事裁判の判決以外にも、生涯をかけて罪を償う自覚をしてほしい」として、1億1000万円の損害賠償を少年に求める方針だと報じられた。刑事裁判の手続の中で被告人に賠償請求できる「損害賠償命令制度」に基づいて、民事的な責任も追及するのだという。

遺族が利用した「損害賠償命令制度」。この名前を初めて聞く人もいるかもしれない。いったい、どのような制度なのだろうか。また、川崎市の中1殺害事件で逮捕された少年たちに対しても、この制度を利用して賠償請求できるのか。刑事事件にくわしい中村勉弁護士に聞いた。

●犯罪被害者の負担を軽くするために創設

中村勉弁護士は、2008年にこの制度ができるまで、犯罪被害者や遺族にとって、加害者への「損害賠償請求」は負担が大きかったと指摘する。

「かつては『刑事裁判と民事裁判は違うから、刑事裁判の手続の中で民事的な賠償を犯人に求めることはできない』という考え方がされていました。

ですから、犯罪被害者は刑事裁判で犯人の有罪を勝ち取っても、損害賠償を請求するには、お金と時間をかけて、改めて民事裁判を提起しなければならなかったのです。

しかし『犯罪被害者にこのような負担をさせてよいのか?』という問題意識から、『損害賠償命令制度』が創設されました」

具体的には、どのような犯罪被害者や遺族の負担が減るのだろうか。

「この制度は、刑事裁判の弁論終結までに、犯罪被害者や遺族が制度の利用を申し立てると、判決後にそのまま同じ裁判官が、民事責任追及のための手続を担当します。

しかも、刑事裁判の訴訟記録をそのまま利用するので、犯罪被害者は、被害に遭ったことを立証しやすく、かつ、迅速に損害賠償を求めることができるのです」

申立手数料は、請求金額にかかわらず「2000円」と少額だ。刑事裁判後の審理の回数も「原則4回まで」と負担は軽い。審理の結果は、民事裁判の確定判決と同一の効力をもつ。

ただ、もし刑事裁判で無罪判決がでた場合は、損害賠償命令の申し立ては却下される。また、損害賠償命令の申し立ては、地方裁判所に限られており、控訴審以降は使えない制度でもある。

●損害賠償命令制度は「少年審判」では利用できない

では、川崎市で起こった中1男子殺害事件で逮捕された少年たちに対しても、「損害賠償命令制度」は利用できるのだろうか。

「この制度は、大人の刑事裁判でしか利用できず、家庭裁判所における少年審判事件では、利用できません

三重県朝日町の事件も、加害者が19歳と少年でしたが、家庭裁判所が事件を検察に送致し、大人と同じように刑事裁判が開かれることになりました。そのため、損害賠償命令制度を利用できるのです」

少年が事件を起こした場合、まず、警察か検察から「家庭裁判所」に送致され、少年審判を受けることになる。その中で、殺人など重い罪の事件について、大人と同じ処分が相当と判断された場合は、再び検察に送られる(逆送)。三重県朝日町の事件では、この「逆送」が行われたのだ。

「川崎市の中1殺害事件も、加害者は18歳と17歳の未成年とされています。しかし、家庭裁判所が事件を逆送して、大人と同じように刑事裁判が開かれることになった場合は、『損害賠償命令制度』の対象となります」

遺族が本当に求めたいのは「被害者を返してほしい」ということだろう。しかし、それがかなわないのならば、「賠償金」の支払いを通して、生涯をかけて罪と向き合うよう望むのは、当然の心情なのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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